2021年12月17日
柔道家 木村政彦 天覧試合に勝つ より
史上最強の柔道家と言われた 木村政彦
・・・・・・私は不思議なものを見た。
私の右肩の上に、小さな内裏様のような影法師が、チョコンと座を占めているではないか。
はて何者だろう?
生死を賭けた試合の最中だというのに、私の気持ちは思わずそこへ吸い寄せられた。
むろん正体のわかろうはずはない。
しかし、それからの試合運びはすべてその薄黒い小さな影によって取り仕切られたのだ。
右にまわれ、今度は左だ。
よし、じっくり構えろ、まだ技をかけてはいかん、と次々に私に命令を下す。
私は心をもたないロボットのように、命じられたままに動いた。
迷ってなどいられない、ほかにどうしようもなかった。
「 今だ ! 」
影が大声で・・・・・・のように私には聞こえた・・・・・叫んだ。
私は渾身の力をこめて大外刈りに出た。
だが、広瀬も右足を素早く引き、グッと耐える。
すかさず私は大外刈りから大外落としに変化し、思い切り体を浴びせる。
広瀬たまらず、頭から畳に落ちる。
一本勝ちだ。
「わが柔道」 天覧試合に勝つ 木村政彦 著 より
「おかげ様」ということばは、日本語の奥深さを感じます。
Posted by asone at 20:35│Comments(0)